会長あいさつ 会長 大塚 耕司
2020年度より、第3代の海洋深層水利用学会会長に就任いたしました。初代会長酒匂敏次先生、第2代会長高橋正征先生と同じようにはとても務まりませんが、私なりの個性を発揮して、海洋深層水利用の発展に尽くしたいと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
さて、2020年に入りパンデミックを引き起こしたCOVID-19は世界を一変させ、人々の価値観も大きく変化いたしました。まず、世界中の人が病や死の恐怖を身近に感じるようになりました。もちろん、これまでも開発途上国や紛争地域では、常にその恐怖にさらされている人たちが多くいましたが、今回は、先進諸国の首都圏でさえも恐怖のどん底に突き落とされました。多くの人が、生と死についてさまざまな思いを巡らせたのではないでしょうか。また、最近の潮流であったグローバル化の波が、感染症という壁に完全に跳ね返されました。誰でもいつでも気軽に海外に行くことができるようになるのはまだ相当先です。そのような中、よりローカルな集団としての帰属意識が世界中で高まったように思います。その究極が家族の価値観の変化です。世界ではロックダウン期間中、日本では緊急事態宣言期間中、家族のありがたさや価値について、だれもが深く考えたのではないでしょうか。
このような価値観の変化は、持続可能な社会の構築に向けたインフラ整備の在り方も大きく変えるのではないかと感じています。海洋深層水は、持続可能な社会を築くための貴重なインフラ資源です。しかし、残念ながら世間に広くその価値が認識されているとは言えません。この一因には、化石資源に比べて圧倒的に資源密度が低い、つまり経済的に不利ということがあります。しかし、コロナ禍を経験して、価値観が変化したことによって、経済的には不利だとしても持続可能な資源を選ぶべきという考え方が、多くの人々の支持や共感を得るのではないかと考えています。この機に、海洋深層水が持続可能社会の構築にとって不可欠な再生可能資源であることをしっかり発信したいと思います。
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