海洋深層水の利用で築く安心な未来社会       会長 高橋 正征



会長 20世紀の社会を支えた地下資源は枯渇と地球環境問題の深刻化によって、今や資源とその利用方法が根本的に問われています。当面は、再生循環性で廃棄物の少ない資源への切り替えが進むと思われます。そうした社会要請に応えられる有力資源の一つが海洋深層水です。日本では、米国ハワイに次いで1989年に国と地元の努力で本格的な取水・供給施設が高知県室戸市に造られ、世界に先駆けて海洋深層水の小規模多目的産業利用が始まり、順調に発展してきました。海洋深層水のような従来型ではない全く新しい資源では研究・技術開発が不可欠で、そのためには国内外の情報を集めて共有することが重要で、1997年に創設された海洋深層水利用研究会の働きが大きかったと思います。日本で生まれた海洋深層水の産業モデルは台湾や韓国に取り入れられ、また先進の米国ハワイへも様々なプラス効果をもたらしました。研究会は2007年に海洋深層水利用学会に発展し、それまでの情報収集・交換に加え、研究・技術開発の進展のためのより積極的な努力が期待されています。さしあたっての目標は、冷熱エネルギー、富栄養性、清浄性などの本格利用で、これらが事業化されると深層水資源は20世紀の石油に似た強力な存在感をもつ可能性があります。産官学の三者が親密な連帯をとっている本会は学会として異色で、その特徴を十二分に生かして目標に向かって会員の皆さんと努力していきたいと考えています。

2008年5月23日

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