我が国での平成13年3月末の復水器冷却用水量は火力発電で約6,700m3/s(0.4m3/s/万kwと想定)、原子力発電で約3,200m3/s(0.7m3/s/万kwと想定)と推定される。このような大量の冷却用水の取水に伴って取り込まれる海生生物に、遊泳能力が乏しい動植物プランクトンや卵・稚仔、比較的大型で遊泳能力を有する魚類等がある。卵・稚仔等は、発電所の取水設備内に設けられた除塵装置を経て取水路や放水路の中を通過する間、取水ポンプ・取水管・放水管などの機器・設備への接触や衝突、そして復水器の中での温度による影響などを受けるものと考えられる。一方、魚類等では、若年魚を中心に、除塵装置での衝突等により斃死する場合がある。このように、発電所への生物連行では、卵・稚仔等の「連行」と魚類等の「衝突」により生じ、漁業資源への影響も懸念されている。
魚類の場合、遊泳能力に違いがあっても一般的には取水口から逃げることができ、取水口には取り込まれない。特に、体長10cm以上の魚が取り込まれる例は極めて少ないことが調査結果からわかっている。一方、浮遊する卵や孵化したばかりの稚仔や動植物プランクトンは、受動的に取水口から取り込まれることになる。この取り込み量は、産卵量や卵・稚仔の自然死亡量に比べて少なく、プランクトンの世代交代がきわめて早いことから、実際に漁業資源に及ぼす影響はごく小さいと考えられている。
生物連行に伴う漁業影響を少なくするためには、地域特性に応じて様々な形態の漁業が行われていることを踏まえ、取水位置や取水方式・取水流速に配慮する必要がある。
深層水の取水に伴う生物連行については、既存取水施設(高知・富山)での現地調査によって、表層取水に比べて種類数、量とも少ないことが明らかにされている。この結果は、表層水を取水するより深層水を用いることが、汚損生物の影響を考慮する場合や、汚損生物付着を少なくする場合に有利であることを示している。
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