海洋深層水(Deep Ocean Water)
       next>>

 深層水・DOW・ Deep seawater などとも呼ばれ、資源利用を意図した呼称。海洋学での深海の一般的な定義を当てはめ、およそ200m以深の海水全体に対して深海にある海水という意味でこの呼称が選ばれた。海洋深層水は有光層(真光層)以深に位置し、光合成による有機物生産がほとんど行われず分解が卓越している。海洋学でいう深層水は数千m以深の海水を指し、しかも資源性は全く考えない。海の平均水深(3795m)を考えると、海水の95%近くが海洋深層水になる。海洋深層水の資源性は1800年代に低温が冷媒資源として着目され、その利用が1900年代始めから試みられた。しかし、適当な取水方式が無く、継続して海洋深層水が汲み上げられるのは1970年代以降である。
 海洋深層水の資源性は、現在知られているだけでも、低温・清浄・富栄養(肥料)があり、この他、塩・金属類・清浄水などの資源性も着目されている。これらはいずれも人間が必要とする基本的な資源で、海洋深層水にすべて含まれる。海洋深層水は資源量が大きく、清浄・富栄養などの資源性はローカルには数ヶ月で生成され、グローバルには数十年~数千年で循環するといわれ、再生循環型の資源である。資源性は周年安定しているが、水深の浅いところでは場所や季節で資源性が若干変動する。ただ、海洋深層水は資源密度が低く、資源性の利用に当たっては工夫の必要なものが多い。
 海洋深層水の利用は低水温を活用する海洋温度差発電が最初で、その後、発電の経済効率を高めるために、米国では1980年代から二次利用としての富栄養性・清浄性を利用した水産養殖・健康食品などへの技術開発が進み、1990年代にハワイ州で事業規模の利用が始まった。ノルウエーでも1980年代後半から水産養殖への海洋深層水の清浄性の利用が行われている。日本でも1970年後半から海洋深層水の資源利用の研究が進み、1989年に高知県(室戸市)に水深320mからの海洋深層水汲み上げ施設が完成し様々な資源性の利用研究が始まった。その後、富山県(滑川市)にも海洋深層水取水施設が整備され、沖縄県(久米島、糸満沖)や静岡県(焼津市)などでも取水設備や施設整備が進められている。
 1990年には国際海洋温度差発電研究会(International OTEC Association, IOA)が組織され、事務局が台湾に置かれ、その中に海洋深層水利用(Deep Ocean Water Application, DOWA)が位置づけられたが、その後、International OTEC/DOWA Associationとなって現在に至っている。日本では1997年1月に海洋深層水利用研究会(Japan Association of Deep Ocean Water Applications)が発足し、海洋深層水の研究と資源利用の技術開発の推進、そのための情報交換などが活発になった。

 (文責:高橋 正征  掲載号:第3巻、第1号、1999年)

 サイトポリシー