海洋深層水と冷房(Air conditioning by deep sea water)
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 海洋深層水を利用した冷房技術はNELHA(Natural Energy Laboratory of Hawaii Authority)や富山県水産試験場、沖縄県海洋深層水研究所、室戸市アクアファームなどで実用化されている。
 一般のビルなどに適用される冷房技術では、冷凍機で7℃程度の冷水をつくり、これを冷房に用いている。海洋深層水が7℃程度以下の低水温で取水される場合は、深層水を直接、冷房用の冷水として利用できる。ただし、一般には2次側(室内側)の空調機が海水対応になっていないため、熱交換器で淡水と熱交換して利用する。熱交換器の材質としては、海水による腐食に対応するためチタンが使用される。NELHAや富山県水産試験場、沖縄県海洋深層水研究所の冷房がこの方法によっており、2001年に米国生態学会(ESA)賞、2002年に米国空調学会(ASHRAE)賞を受賞したCayuga湖の底層水を利用してコーネル大学の冷房を行う技術と同じ考え方で、冷凍機による冷房と比べて非常に大きな省エネルギー効果を得ることができる。
 深層水が十数℃以上で取水される場合は、深層水を冷凍機やヒートポンプの冷却水として利用することによって冷房を行う。室戸市アクアファームではこの方法で冷房を行っており、熱源機としてヒートポンプを採用することで、冬には深層水を温熱源として利用した暖房も行っている。この方法は、深層水の温度が外気温度と比べて、夏には低く、冬には高い特性を利用したもので、温度差エネルギー利用と呼ばれる省エネルギー技術としてその普及促進が推奨されている。表層水や河川水を用いた温度差エネルギー利用は、大阪南港や福岡ももち地区などの大規模地域冷暖房施設で実用化されている。深層水は表層水や河川水と比べて年間を通して水温が安定しており、温度差エネルギー利用においても優れた特性を有している。ただし、深層水を暖房に利用する場合は、水温が15℃程度あった方がヒートポンプの運転効率が良くなり、10℃以下では温度が低すぎて熱源として利用できない。これは、汎用熱源機器が15℃以上の熱源水利用を前提にして設計されているためである。
 深層水は冷房に使われることで温度が上昇し、暖房に使われると温度が低下する。現在のところ、冷暖房での利用だけのために深層水取水施設を建設することは経済性の観点から考え難く、この特性を利用した多段利用の一環として計画されることが妥当と考えられる。
 
(文責:森野 仁夫  第7巻、第2号、2003年)
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